TOPIX 500およびTOPIX Small構成銘柄のうち、2021年3月末までに決算を迎え同6月までに開催された株主総会において、取締役(社内、社外)選任決議案の賛成比率は95%以上となりました。賛成の議案数も前年からさらに増加し、過去最高水準に達しています。その大きな要因の一つに、議決権行使助言会社のISS(Institutional Shareholder Services)やグラス・ルイスが日本向けの議決権行使助言方針において、経営トップの再任決議案に対するROE基準の適用をコロナ禍の影響を理由に一時的に停止していることが考えられます。アイ・アールジャパンの調査によると、社外取締役選任決議案に対して20%以上の反対があった割合も、全議案数の2.85%から2.38%へと減少の傾向をみせており、その背景には国内機関投資家の一部が社外取締役に求める独立性基準を緩和したことが理由として挙げられます。一方で、社内取締役選任決議案に対して20%以上の反対があった割合は1.29%から1.54%へと上昇しており、その主な要因の一つとして海外機関投資家が取締役会の多様性(ジェンダー)に関する基準を新たに導入したことが考えられます。
アクティビストの日本企業に対する注目度は年々上昇傾向にあります。日本企業を対象とするアクティビストのキャンペーンのうち、アメリカを除く全世界に占める割合が2021年上期時点で26%と、2020年通期の割合を上回っています。一方で、株主提案数に関してはTOPIX 500とTOPIX Smallの間で差異が見られます。2020年に関しては両指数で株主提案数が増加しましたが、2021年についてはTOPIX 500における株主提案数は減少したのに対して、TOPIX Smallでは引き続き増加傾向が確認できます。主な理由としては、アクティビストの対象がTOPIX 500からTOPIX Smallを構成する中小型企業へと拡大していることや、TOPIX 500における比較的規模の大きい企業との対話が前進していることなどが考えられます。
日本株式運用部: 日本株式ESGエンゲージメント戦略
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当社グループは、9つの主要なガバナンスおよびエンゲージメント原則に基づいて、2020年に大手資産運用会社としては初となる議決権行使判断の事前開示を開始しました。投資先企業の年次株主総会に先立ち、議決権行使の論理的根拠と目的を体系的且つ具体的に公表することを通じて、議決権行使の判断における透明性と説明責任を強化しています。詳細は、当社ウェブサイトの「議決権行使と行使判断の公表(NB Votes)」のページをご覧ください。