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バブルから空気が抜けつつあるのか?

ここ1年間でバリュエーションは大幅に低下しましたが、株式のリターンは依然として堅調であるため、バリュエーションの低下はきわめて秩序立ったものとなっています。その理由として、相互に関連する5つの要因が考えられます。

過去12カ月間で株式のバリュエーションは大幅に低下しましたが、市場全体の暴落はもちろんのこと、大規模な調整さえも発生しませんでした。これほど市場の混乱が少ない中で、株式のバリュエーションが低下するのは珍しいことですが、これにより「バブル」をめぐる議論への圧力がいくらか緩和しました。実際、S&P500指数の予想株価収益率(PER)は2025年10月に23倍近辺でピークを迎え、足元では19倍前後で推移しています。「マグニフィセント7(Magnificent Seven)」と呼ばれる米国の超大型企業のPERは、約33倍から大幅に10ポイント低下して約23倍になったのに対し、マグニフィセント7を除くS&P500指数の残りの銘柄は約20倍から18倍への低下にとどまりました。

通常、これほど大きなPERの低下には、株式市場の著しい変動が伴います。たとえば、直近における今回に匹敵するPERの低下は、「解放の日」のショックによって急速かつ激しい株価調整が引き起こされたものでした。一般的に、バリュエーションが高水準にあるときには、市場はいずれ急落します。もしそうならなければ、投資家は将来のリスクを懸念することになります。しかし、今回のバリュエーションの低下は、株価をはるかに上回る勢いで増加した企業収益によって引き起こされたものであり、収益はバブルから空気を抜く働きをしています。

バリュエーションの低下過程は、きわめて穏やかなものでした。ボラティリティは、広範囲に株価の信頼性が失われたのを反映して上昇したのではなく、個別のイベントをめぐって一時的に高まったにすぎません。また、株価の動きはファンダメンタルズに基づくボトムアップ的なものであり、市場全体が再評価されたわけではありません。S&P500指数構成銘柄の平均的な2銘柄間相関係数は約10%と、2020年以降で最も低い水準に近いことからすると、指数構成銘柄が一様に下落したのではなく、個別銘柄ベースで再評価されていることが示唆されます。

マグニフィセント7のバリュエーション低下が相対的に大きかったことは、当社にとって驚くべきことではありません。当社は数カ月前、マグニフィセント7は、市場の他の銘柄と比較して、グループ全体としてすばらしさを失う(マグニフィセントでなくなる)リスクに直面していると指摘しました。しかし、マグニフィセント7のアンダーパフォームとは関係なく、投資家の目には、ほとんどの株式市場(米国以外の株式市場を含む)が著しく割安になっているように映っています。これは、「強気相場は堅調な勢いをもって継続している一方で、株式はより魅力的なバリュエーションで取引されている」という市場全体に共通するパラドックスを示しています。

では、市場でこれほど穏やかにバリュエーションが低下したのはなぜでしょうか。これには5つの主な理由があると考えられます。

1. 金利。割引率の上昇は通常、PERの低下につながります。10年物米国債の利回りは、この点で重要かつ観察可能な指標です。同利回りは2025年10月下旬以降、およそ84ベーシス・ポイント(bp)上昇していますが、その上昇分のほぼすべてが、インフレ期待の不安定化ではなく、実質金利の上昇によるものです。最近、当社が指摘したとおり、実質金利には細心の注意を払う必要があり、利回りのさらなる上昇は株式市場にとって脅威となる可能性があります。

しかし現時点では、利回りの上昇は、警告サインというよりは、名目GDP成長率がより高いトレンド水準へと回帰していることを反映していると考えることもできます。これは、金利の上昇によってグロース株が大幅に下落した2022年とは、まったく異なる背景です。今回は、予想利益の伸びがクッションとなり、PERが低下しているにもかかわらず、株式市場は金利の上昇を冷静に受け止めています。

2. 純資本供給。ここ数年間、株式市場にとって強力な追い風となっていた自社株買いは、新たな自社株買いの発表がピークを過ぎて減少に転じていることから、勢いが鈍化する兆しを見せ始めています。特にハイパースケーラー(超大型IT企業)は、自社株買いを実施するのではなく、新規株式発行や社債発行を通じて人工知能(AI)インフラの構築資金を調達する傾向が強まっています。これにより、株式の供給が増加するだけでなく、投資家が評価すべき社債の供給も増加することになります。限りある需要をめぐってより多くの資本が競合することにより、買い手優位の市場が形成され、買い手は通常、より有利なバリュエーション、すなわちより高い利回りとより低いPERを求めるようになります。本質的に、投資家はより高いリスクプレミアムを要求しているのです。これは、バリュエーションの低下を供給サイドから見た話です。

3. 資本集約度。市場のかなりの部分が、低設備投資、高利益率の知的財産やデジタル中心のビジネスモデルから、実物資産、高水準の設備投資、そしていくつかのケースでは高水準の負債を伴うビジネスモデルへとシフトしています。金融セクターを除くS&P500指数の資本集約度(売上高設備投資比率として定義)は、現在、ITバブル期のピークを上回っています。長期的な相関関係はきわめて明確です。つまり、資本集約度が高く、利益率の低い企業は、一般的にPERが低くなる傾向にあります。これが、マグニフィセント7のバリュエーションが急激に低下した理由の一つです。また、上記のシフトにより、S&P500指数構成企業のキャッシュフローの質と持続期間も変化しています。

4. 利益の持続可能性と景気循環性。堅調な利益であっても、それがいつまで続くかという疑問は解消されません。一部の投資家は、こうした利益拡大局面を「一時的な高揚状態」(「大蛇に飲み込まれた豚がヘビの体の中をゆっくり移動していくような状態」)と見なしていますが、一方では、AI関連の更新サイクルにより、今回の利益成長がより持続可能であるという証拠が増えていると見る投資家もいます。AI関連投資の持続性を確認したいという需要は依然として大きいものの、懸念が生じるのは当然のことです。一時的なものかもしれないと懸念する利益水準に、投資家が高いPERを付与することはないと思われます。

市場の構成も重要です。景気敏感株が勝ち組のとき、それらは歴史的にバリュー株とみなされてきました。したがって、時価総額ベースでバリュー株や景気敏感株が株価指数に占める割合が大きくなると、一般的に低水準のこうした株式のPERが市場全体に与える影響が大きくなります。過去を振り返ると、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げサイクルの後は、バリュー株がグロース株をアウトパフォームする傾向にあります。

5. 地政学的要因。定量化が最も難しい要因ではありますが、ここ数年、地政学的な不確実性が高まっていることに疑いの余地はありません。未解決の貿易摩擦や世界に広がる不確実性は、市場におけるリスクプレミアムを上乗せする要因となります。これらは企業のコスト、需要、利益予想の信頼性に影響を与える可能性がある一方、コモディティ価格の上昇はインフレや債券利回りに上昇圧力をかける可能性があります。したがって、地政学的リスクは、リスクプレミアムを高め、バリュエーションを下押しするという点で、他の4つの要因をさらに強める働きをしています。

これらの要因が相まって、投資家が年初来で堅調なリターンを享受し続ける一方で、バリュエーションは比較的穏やかに低下してきました。当社はこうした動きを引き続き注視していきますが、現時点では、リスク資産に積極的な姿勢を取ることが適切であると引き続き考えています。バリュエーションの圧力が秩序正しく緩和されたことにより、懸念材料の一つが軽減され、さらなる相場上昇を維持するために必要な利益やキャッシュフローに、より注力することが可能になりました。

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