最近の債券市場の動きはきわめて激しく、特に欧州では、ソブリン債の利回りがここ四半世紀間の最高水準を突破し、一部の社債市場ではスプレッドが拡大しています。また、水面下でも圧力が高まっています。たとえば、ここ1カ月の間に、フランス国債とドイツ国債のスプレッドは、1週間の拡大幅としては1990年に東西ドイツが再統一して以降で最大を記録しました。その結果、欧州全体の金利プレミアムは欧州株式に対し、少なくとも2011年以降で最も大きなプラスの「スプレッド」となっています。これはきわめて異例な状態であり、こうした状況が長く続く可能性は低いと思われます。
四半世紀にわたって続いたパターンの崩壊
株式はリスク資産として、一般的にボラティリティがより低い債券に比べて、投資家からより高いプレミアムを要求される傾向にあります。これは特に欧州において顕著であり、高水準の株式配当や株主還元も一因となり、こうした関係は、欧州のソブリン債危機や2020年のパンデミック局面での短期間を除き、四半世紀にわたって「定着」してきました。しかし、10月の債券市場の動きにより、こうしたプレミアムの相対的な関係に明確な逆転が生じました。
経験則に基づくと、株式に類似した性質を持つ欧州の債券は、長期のソブリン債を基準とし、それに社債のスプレッド・リスクを若干上乗せしたものです。足元では、株式益利回りはこうした債券の代理指標を大幅に下回っています。これはソブリン債に限った話ではありません。BBB格社債の最低利回りに対する欧州株式の益利回りのスプレッドは、直近の市場変動を受けて過去の分布の20パーセンタイルを下回っています。こうしたレンジが観測されたのは、世界金融危機直後以来のことです。興味深いことに、欧州の投資適格社債のスプレッドも(20パーセンタイルから)50パーセンタイルに近づいていますが、米国の同種の社債指数にはこうした動きは見られません。
こうしたギャップは長続きしないと考える理由
欧州中央銀行(ECB)と米連邦準備制度理事会(FRB)は、いずれも9月会合で提示した見通しの中で、経済成長についての自信を深めていました。当社は、欧州でも米国でも、市場に織り込まれている利上げが最終的に実施されるとは予想していませんが、両地域には重要な違いがあります。すなわち、欧州の経済成長については懸念を強める一方、米国のインフレについてはより楽観視しています。
欧州では、経済成長に対する下方リスクが高まっていると判断されます。予想されている追加利上げが実施された場合、翌日物金利はこの先5年間、3~3.25%のレンジで推移すると予想されます。これは、1.75%に向かって政策金利が引き下げられ、その後は2%以下の水準で安定すると予想されていた1年前とは大きな違いです。米国に恩恵をもたらしているAI関連投資というプラス要因がないため、これまでと同様に、欧州の経済成長は予想よりも低調になる見通しです。
加えて、債券市場への圧力が強まったため、欧州の金融市場の分断リスクが改めて強く意識されるようになっています。実質金利が名目経済成長率を上回る場合、対GDP債務比率を安定させるためには、基礎的財政収支の黒字が必要となります。中央銀行が利上げを終えると、通常は債券利回りがピークを迎えるため、ECBにとっては、「伝達保護措置」(ユーロ圏内の国債利回り格差の拡大を抑制することを目的とした債券購入メカニズム)を発動するよりも、利上げを見送る方が大きな効果をもたらす可能性があります。
これとは対照的に、米国では、経済成長がかなり堅調であることが示されているにもかかわらず、コア・インフレ率は低下傾向にあります。また、8月のジャクソンホール会議での講演でケビン・ウォーシュFRB議長が示唆したように、もしAI(人工知能)が実際に生産要素の一つとなっているのであれば、実質金利が上昇しても、金融政策による大幅な対応を正当化するものではないかもしれません。
政策判断の誤りを余儀なくされるのか?
米欧の金利動向を詳細に見ると、市場はこうしたマクロ経済面の相違を認識していることがうかがえます。米国債利回りの年初来の変動のうち90%以上は、通常は経済成長率と連動する実質利回りによって引き起こされているのに対し、ドイツ国債利回りの変動のうち80%近くは、ブレークイーブン・インフレ率(市場が予想する将来の期待インフレ率)、すなわちインフレ懸念によって引き起こされています。資産クラス全体を見渡すと、米国を対象とした主成分分析フレームワークによると、市場全体として、より力強い経済成長とより緩やかなインフレを織り込むようになっていることが示唆されます。
特に注目すべき点は、欧州経済が米国とは異なる政策目標に基づいて運営されていることです。ECBが総合インフレ率のみに焦点を当てているのに対し、FRBは物価の安定と雇用の最大化という二つの目標(デュアル・マンデート)を掲げ、より柔軟な政策運営を行っています。こうした状況では、政策金利が引き上げられ、より長期間にわたって高水準を維持することは、「避けられたはずの政策判断の誤り」と見なされる可能性があります。ECB政策理事会も、2021年から2022年にかけての金融引き締めが不十分であったという政策ミスを繰り返さないように努めているのです。
当社のポジショニング
年初来の市場は二極化しています。株式やコモディティといったグロース型の資産が堅調なパフォーマンスを示す一方、主要債券資産は厳しい状況に置かれています。欧州については、今後の見通しが好転することが予想され、アセット・アロケーションにおいて債券は株式に比べて相対的に魅力的であると判断されます。前回のアセット・アロケーション方針が発表されて以来、欧州債券のリスクプレミアムは上昇しており、中期的にはより魅力的に見えます。それとは対照的に、欧州株式は、景気循環の影響を受けやすいこと、高い集中リスク(自動車・銀行セクターへの偏り)、さらに最近のバリュエーション低下後も、世界の他の市場と比較して過去の水準に照らした割高感がやや強いことなどにより、伸び悩みが懸念されます。下半期の1株当たり利益(EPS)が前年同期比で23%増となり、2027年もプラス成長が続くというコンセンサス予想は、楽観的すぎるかもしれません。米国や特に日本では、株式がそれぞれの地域の債券をアウトパフォームすると予想されます。
今後の注目
10/22(木)
- 日本 消費者物価指数(CPI)
- 米国 新規失業保険申請件数
10/23(金)
- 米国 総合購買担当者景気指数(PMI)

