CIO Weekly Perspectives

日本-為替介入が政策への圧力を強める

日米の歴史的な為替介入によって円相場は安定しましたが、為替レートの最終的な決定要因は、二国間の金利格差です。

先月、円高を促すために日米が行った異例の協調介入は市場を驚かせましたが、為替のメカニズムと日本への投資判断とは区別して考えることが肝要です。

日米両国の財務省は8月1日、円買いの協調介入を実施したことを正式に認めました。これは1998年以来の協調介入であり、日本は360億~590億ドルを投じたと推定される一方、米国はドルではなくユーロを売却しました。

今回の介入の規模を踏まえると、市場が当初大きく反応したことも理解できます。円相場は1ドル160円近辺から150円台半ばまで急上昇しましたが、数日後には1ドル159円付近まで再び低下し、市場介入前の円安水準から若干円高になった程度となりました。

当社の見解では、この動きは、円相場の持続的な下支えには為替介入だけでなく、日銀による利上げが必要であることを浮き彫りにしています。重要なのは、今回の為替の動きは、日本株に対する当社のポジティブな見方を引き続き支えている構造的な要因(企業収益の成長、ガバナンス改革、政策主導の投資)とはほとんど関係ないととみている点です。

日銀に注目が集まる

これほど大規模な市場介入が注目を集めるのは、その影響が為替レートだけにとどまらないためです。日本は米国債の最大保有国の一つであり、円買いのための大規模な資金調達には、日本が保有する米国債の一部を売却することが必要となります。この動きは、円を下支えする一方で米国債利回りを押し上げる可能性があるため、歴史的に見て、米政権は協調介入に対して慎重な姿勢をとってきました。

こうした慎重姿勢は、より根本的な問題を示唆しています。つまり、実質的な政策転換がなければ、為替介入は持続的な効果をもたらさないということです。日本の為替介入の方法は巧妙でしたが、根本的な金利格差の是正に代わるものではありません。当社の見解では、米国の金利と経済成長が引き続き高水準を維持する一方で、日本がさらなる利上げを実施しない場合、介入資金をどれだけ投入しようとも、円は引き続き売り圧力にさらされると思われます。

日銀は、先進国の中央銀行の中では依然として異例の存在であり、財政刺激策と並行して金融政策の正常化を進め、段階的な利上げを続けています。市場の関心は早ければ9月にも利上げが行われる可能性へと移っており、高市政権がそのタイミングを支持する兆候も見られます。とはいえ、積極的な金融引き締めに対する国内のハードルは依然として高いと思われます。数十年にわたる低成長と低金利により、住宅ローン利用者や中小企業は依然として借入コストに関する懸念を抱いており、日本が大きな政府債務を抱えていることからすると、政府が財政拡大を志向している状況下では、急激な利上げは債務返済コストを圧迫することになるからです。当社は、次回の利上げは第4四半期に行われ、2027年にさらにもう1回実施された後、2028年には利下げに転じ、政策金利は1.00~1.25%という中立金利の水準に落ち着くと見ています。

為替介入の限界

当社が予想する金利経路でも、米国の短期金利は当分の間、日本を数%ポイント上回る水準で推移する可能性が高くなっています。したがって、為替介入は為替レートの急激な変動を一時的に緩和できるかもしれませんが、その背景にあるインセンティブ構造そのものを解消することはできません。

明確にしておきたいのですが、当社は為替介入の重要性を軽視しているわけではありません。片山さつき財務相とスコット・ベッセント財務長官はいずれも、為替レートの無秩序な動きが再び生じた場合には「ちゅうちょなく」再び為替介入を実施する意向を示しています。しかし、決意を示すことと問題を解決することは別物です。円高が持続するためには、日銀によるさらなる金融政策の正常化と、米国との金利差の縮小が必要になるとみられます。これは、為替介入だけでは実現できません。

重要なのは、当社のポジショニングは、最近の為替介入よりも、日本のファンダメンタルズや財政面への懸念を反映したものだという点です。当社は10年物日本国債をアンダーウェイトに維持していますが、これには日本の財政懸念だけでなく、補助金の影響を除いた国内インフレ率の上昇も反映されています。しかし、イールドカーブの急な傾きと超長期ゾーンに織り込まれているプレミアムを考慮し、同ゾーンにおけるポジショニングを選好しています。イールドカーブのこうした形状は、日銀が段階的な金融政策の正常化を継続するにつれて正常化していくものと思われます。

為替動向に左右されず、確信を維持

当社は債券ポジションを若干調整したものの、日本株市場については引き続きポジティブな見方を維持しています。実際、日本株をオーバーウェイトとしている背景には、いくつかの強力な支援材料があります。具体的には、世界の製造業への高いエクスポージャー、半導体やAI(人工知能)サプライチェーンへの参画、コーポレートガバナンス改革、自社株買いの増加、株主還元の改善などが挙げられます。

重要なのは、こうした構造的な強みが数字にも表れているという点です。第2四半期決算は、当社の見方を裏付ける内容となっています。先日のCIO Weekly Perspectives「利益成長が米国以外にも広がる」の中で指摘したとおり、これまでのところ、東証プライム市場に上場している大半の企業が、市場予想を上回る業績と前年同期比での力強い利益成長を発表しています。

通貨のバリュエーションは世界貿易を左右する重要な要因であり、日本のような輸出主導型経済にとっては特に重要です。しかし、最終的に通貨価値を左右する要因は、長期的な経済成長です。日本の経済状況が改善することで、政策当局は経済成長を阻害することなく政策金利を引き上げることが可能になると思われます。これに加えてコーポレートガバナンスの構造的な改善を踏まえ、当社は日本株についての楽観的な見方を維持しています。

今後の注目

8/19(水)

  • 米国 連邦公開市場委員会(FOMC)議事録

8/20(木)

  • 米国 新規失業者保険申請件数
  • 米国 フィラデルフィア連銀製造業景気指数

8/21(金)

  • 米国 製造業購買担当者景気指数(PMI)